今でも6月病

6月になった。つまり、5月が終わってしまった。早いな、もう暑いな、なんて考えていたら、一つ思い出したことがあった。


高校1年の6月に入ってすぐの頃、担任の先生との二者面談があった。これは私が悪いことをして呼び出されたという訳ではなく生徒全員に対して行われていて、「高校に入学してちょっと経ったけど、どう?慣れた?」という雰囲気のものだった。


私が入学した高校は、キリスト教系の女子校だった。さぞかしお淑やかなお嬢様学校だと思われてしまいそうだし、私も入学する前までは自分が通う学校に対してそんなイメージを持っていた。けれど、いざ入学してみたらそれは違った。ワイワイ、というよりもかなり騒がしい雰囲気で、単刀直入に言ってしまうとすごくうるさかった。(これは絶対に女子校あるある。笑)


私はその雰囲気を多少面白がってはいたけれど、どこか慣れることが出来なくて気疲れもしていた。中学にあまり馴染めないで過ごしていたことから、高校は少人数制で静かなところがいいなと思って女子校を選んだ。だから騒がしい雰囲気に戸惑いがあったし、来るところを間違えてしまった!感が否めなかった。


「高校どう?」

 

面談で担任の女の体育の先生に聞かれた。その質問に対する自分の返事を今でも覚えている。


「今のところ大丈夫です。でも、5月病ってあるじゃないですか?私、あれの6月バージョンになりそうな気がしてて、これからがちょっと怖いなって思ってます。」


めちゃくちゃ生意気な口の利き方だ。でも、今思い返してみてもこの言葉は、今後もこの環境の中でやっていけるだろうかという不安と、来る場所を間違えた!感から出たイライラ気持ちのトゲトゲが合わさった出た、1ミリの嘘もない言葉だなと思う。


私は騒がしいクラスの中では1番と言って良い程おとなしかった。かなりの優等生に見えていたであろう私から予想外の返事を聞かされた先生は、目を丸くして


「…ほぉ。」


と言った。それも良く覚えている。


その後は「まだ早いけど、進路について何か考えてることはある?」というような話になり、私は「まだ全然考えていないけど、言葉が好きだから言葉について勉強したい気はする」と言った。体育の先生ということで少し身構えていたけど、先生は思っていたよりずっと優しかった。あまり長い時間は掛からずに面談は終わった。

 


その時は進路のことなんて全然考えていなくて、何となく興味のあることを喋っただけだった。けれど、高校卒業後の私が進んだのは、芸術系の教養学科のある大学だった。そこで、言語芸術作品について学ぶ4年間を送った。


その時の担任の先生の連絡先は、高校を卒業した時から今までずっとLINEの友達に登録されている(頻繁に連絡を取り合っている訳ではないけれど)。2年生になって担任でなくなった後も、廊下で声を掛けてくれる優しい先生だった。


それに、私は今でも5月より6月の方が断然憂鬱な気分になる。今でも6月病だ。

 

振り返ってみると、あの二者面談から今この時までに、これだけのことが繋がっている。そして何より、あの時パッと出た“6月病”という言葉からこんな文章を書いていることが我ながら一番の驚きだ。


未来は見えない。でも、未来はもうここにあるのかもしれない。少しだけ、そんな気がしている。雨ばかり降りませんように。今年の6月病は、あまり重くありませんように。